オトコの検察庁,オンナの裁判所

fkitty2006-03-13

裁判所の入っている連邦政府ビルには検察庁も入っている。詳しくは言えないが,その検察庁内部の男女差別に関する事件がなんと私達の部に回ってきた*1。そのかなりひどい差別の内容に,私はずっと原告(女性検察官)は精神的にどうかなってしまって妄想を訴状に書いているのではないかと思っていたが,少なくともそのようなことはなかった。
その案件が終わったとき,隣の部屋の女性ロークラークが「検察庁には女性の検察官も結構いるけれど,何となく女性は働きづらい職場なのよ。」と言った。日本と違って法廷でかなりの割合で女性検察官を見かけていたので,これは意外。彼女曰く,「裁判所は女性にとって働きやすい。」とのこと。確かに,ここの部は裁判官とセキュリティガード以外は見事に女性ばかり。皆家庭を大事にしていて,うらやましいことに毎日定時に帰る生活。
彼女との会話から,修習生時代に検察官を志望していたことを思い出した。何も知らない若者にありがちな,黒いものをためらいなく黒いと,白いものをはっきり白いと言える(というイメージの)職業に就きたかった。
でも…検察官の定員は,女性に限っては1クラス(全員で70人弱)に1人という不合理な枠があったこと,その枠のために検察官志望の女性同士である意味競り合いがあったこと,飲み会では常に検察官の隣に座ってお酌をするよう周りから言われていたこと,検察官になりたいということを常にアピールして,他の修習生が嫌がる事件の取調べも率先して引き受けていたこと,男性なら手を挙げるだけでほぼオファーが出てそれどころか検察官志望ではない人が検察官にならないかとの誘いを受けていたこと,競争相手(笑)が全員いなくなったにもかかわらずオファーがなかなか出なかったこと*2で私はかなり疲弊した。
最後には検察官になりたいのか競争に勝ちたかったのか分からなくなってしまった。結局,私が検察官志望であることを知った実務庁の検事正との食事会(出席していれば近い将来オファーがもらえた。おそらく。)がセッティングされそうになった時に,悩んだ末,食事会を辞退して同時に検察官志望をやめた。大変な仕事なのに,それに加えて仕事の内容以外で例えば女性だから云々という問題で煩わされるかもしれないことが予想され,そんな困難と引き換えにするほど検察官にこだわる理由がなかったのが正直なところ。
後日談。研修所の成績は個人情報であるにもかかわらず本人に開示されない。アメリカのロースクールに出願する際には研修所から直接ロースクールに成績証明書が送られる。インターン先確保のために各種書類を取り揃えているときに,ロースクールに保存してある研修所時代の成績証明書を初めて見る機会があった。予想外にも検察科目にいい成績がついていた。それを見て,少なくとも頑張っていたこと自体は認めてもらっていたんだから,自分の中の苦い思い出もチャラにしていいんじゃないかなあと,あれから5年以上も経つ今,そう思うようにしている。

*1:そんな近すぎるところの案件を審理できるはずはなく,別の地区の連邦裁判所に移送。

*2:あくまでも当時の,私の個人的体験です。