交渉術あれこれ(CLEその3)

これは一般に広まっている分類だと思うけれど,敵対関係にある当事者の1対1の交渉の際には色々な戦術とそれへの対抗策がある。以下思いっきり意訳。

  • Good Guy, Bud Guy 「北風と太陽」作戦

内容:交渉人Aが最初に強面で無理目の要求を突きつけた直後,物腰の柔らかな交渉人Bが出てきて相手方に安心感を与え,Aよりゆるい要求をすることで交渉成立に持ち込む。ABを同一人物がしても可。
対抗策:交渉人Aのことはとにかく無視する。

  • Extreme Demands 「高望み」作戦

内容:自らの希望よりもわざと高い要求を相手方に突きつけ,それと相手方の希望との中間点に妥協を見い出すことにより,結果的に得をする作戦
対抗策:こちらも高望み作戦を実施する。または高望みをやめるよう要求する。

  • Higher or Shifting Authority 「上司に聞かんと分からしまへん」作戦

内容:交渉の肝心な部分で自分には最終決定権がないと言うことでいったん引く作戦。交渉が不利に進んでいる場合に使うものと思われる。
対抗策:交渉の最初の段階で最終決定権が誰にあるのかを確認しておく。またはここで決めないと交渉を止めると脅すことも。

  • Imcomplete or Ambiguous Terms 「どさくさに紛れて」作戦

内容:(契約書作成に際し)交渉の場で取り上げられなかった問題について,こっそり契約文言をこちらに有利なものにしておくこと
対抗策:文句を言い,その問題について新たに交渉を始める。交渉過程を文書に残す。

  • Take it or Leave it 「交渉の余地あらしまへんで」作戦

内容:言葉どおり。自らの要求がとおらなければ交渉をやめると明言する作戦
対抗策:相手方が「これは譲れない」とする最低ラインが本当にそこなのかどうか,歩み寄りの余地が本当にないのかを多く質問することによって探る。

  • The Actor 「私女優なんだから」作戦

内容:相手方を脅したり,罪悪感を持たせたり,同情をひいたり,相手方との間に偽物の友情を築いたりすることでなりふり構わず有利な結果を得ようと頑張る作戦
対抗策:相手方がこの作戦を使っていることを認識した上で,感情に流されず,無視するか,こちらも女優作戦を実施するか,断るか態度を決めること。

  • The Non-Negotiable Issue 「規則で決まっておりますので」作戦

内容:「規則で決まっておりますので」ということで交渉の余地をなくする作戦。お役所にありがち(アメリカでも)。
対抗策:多く質問することで,本当にそんな規則があるのか,裁量の余地は全くないのかを探る。

  • Nibbling the Deal 「これぐらいええでっしゃろ」作戦

内容:交渉がほぼまとまりかけ両者がほっとした瞬間を狙って,マイナーな問題を持ち出し,自らの希望を「お願い」して,相手方に「これぐらい,ま,いっか。」と思わせること
対抗策:同じくらいマイナーな問題をこちらも出して,同様に「お願い」を聞いてもらう。

いやはや,2重人格になったり,女優になったり,交渉するのもなかなか大変。
こういうのは,実際にやってみることもせず頭で覚えているだけでは使い物にならないだろう。ただ,注意しないといけないのは,上記の交渉術はお互いの立場が50:50の際に最もよく効果が発揮されるであろうということで,実際の場面ではあまりそういうことはなく,こういう小ワザを使う以前にお互いの力関係で物事が決まってしまうことが多い。

ところで,これ実生活でも使えるのでは,と思ったのは私だけでしょうか?コワイコワイ。