あいまい言葉(CLEその1)

先日出席したCLEのセミナー*1は色んな意味で楽しかったが,その中で感動したことを1つ。
Negotiationのクラスは,受講者(弁護士)の中から選ばれた人が講師(これまた弁護士)との間で行う一対一のやりとりを通して他の受講者が交渉術のあれこれを学ぶという内容だった。選ばれた受講者は,「何らかの団体に所属しており,講師にその団体のために講演を依頼する立場の人」という設定のみが与えられており,その他は全てアドリブで話を進め,最終的に講師から「OK,講演しましょう。」という言葉を引き出せば大成功である。チャレンジする受講者は3人。うち2人は,講師から,「OK,月曜日にでも日程の件で私の秘書に連絡して下さい。」という言葉を引き出せていた。
これをそのまま受け取ると,通常は,「OK」=講演自体は引き受けた,「秘書云々」=細かい詰めは秘書としてほしい,となろう。実際2人もこの言葉を聞いた途端ニッコリして交渉を終えていた。
しかし,である。講師によれば,秘書云々というのは「おととい来やがれ。」という意味が含まれているらしい。実際にこの言葉を間に受けて月曜朝に秘書に電話をしたが最後,のらりくらりとかわされて結局講演は実現しないというのだ…実に分かり易いよ(怒)。ていうか,断るときに「あがってお茶漬けでも食べていかへん?」と言う(らしい*2)京都の人じゃあるまいし。英語といえば直接的論理的な言葉のはずなのに。
まあ少しは分かる部分もある。お上品な人になればなるほど,公の場になればなるほど,間接的な言葉の遣いかたをする傾向にあると思う。例えば相手が間違っていると思っても,「I disagree」とか「It's incorrect」など直接的なものの言い方はせず,「You're right, and I guess...(反対意見)」等結構回りくどいのだ。
ただこれは相手方との関係によっても,さらには傍に誰がいるかによっても変わってくる。激しく対立している当事者の弁護士同士間で↑のようなぬるいやりとりはさすがにないが,そういった人達でも裁判官の前に出ると皆最上級に丁寧な言葉を遣おうとしているのがよく分かる。そういう意味では,私は日々最も美しい英語に触れているのかもしれない。

*1:7日付けを参照

*2:一度も見たり聞いたりしたことはありません。