fkitty2005-11-09

日本で働いていたころ,民事の裁判案件は大抵裁判所主導で一度は和解が行われた。当方と相手方との間で求めている(相手方にとっては支払う)金額に開きがある場合,裁判官は何とかしてその開きを埋めて和解に持っていこうとする。この辺が裁判官の腕の見せ所で,ひどい裁判官になれば,何の理屈を付けることもなく「もうちょっと請求額を負けてもらえませんか?」などと堂々と言ってくるので,そういうのは,バナナの叩き売り式和解*1を勧める裁判官ととらえ,これは決してよい意味ではなかった。普通の裁判官は,和解において,もし現在の時点で判決が出ればどういう判決になるかという心証を開示することが多く,例えば,「判決になったら負けますから,もう少し妥協されるのが一番よい解決方法になると思います。」という風に言われればこちらも歩み寄らざるを得ない*2
こちらでも,settlement conference(和解会議)という裁判所で行われる和解があるが,事件の争点には踏み込まずに早急に事件を解決する目的から,和解が行われると決まった時点で,事件そのものを扱う裁判体とは別の裁判体に回される。そこで,文字通り延々と金額のすり合わせが行われるのだが,これがまさしくバナナの叩き売り式。和解をする裁判官は,裁判資料を読んではいるものの,争点とは関係なく金額のすり合わせのためにだけ存在し,仮に心証を開示したくともこの先陪審が事実を認定することを考えると結論に予測がつかないのだ*3。私の目から見て,バナナの叩き売り式であっても,なぜかいいペースで対立していた両者の金額の差が詰まっていく。これは,裁判所への信頼と当事者の事情(早く和解しないと弁護士費用をこれ以上捻出できない等)が大きいのだろうが,裁判官の個性によるところもある。ちなみに,和解は,丸々1日をかけて行われ,日本と違って,裁判官が原告と被告に与えられている各部屋を行ったりきたりする。12回位行ったりきたりするのは普通とのこと。
[追記]その後調べた結果,トライアルとは別の裁判体が和解を行う上記のような方式と,トライアルと同じ裁判体が行う和解(日本式)とがあることが判明した。

*1:何の理屈もなく金額をどんどん下げていくことから。

*2:当事者双方にこのように言う裁判官もたまにいるらしい。その時は歩み寄った方の負け。

*3:アメリカの裁判官でさえ,陪審裁判について「陪審がどう出るか分からない。」と言う。