現在私が実習しているのは連邦裁判所で,アメリカには州裁判所というものも存在する。連邦裁判所は,異なる州に住んでいる当事者同士の事件,連邦財産に対する罪,独占禁止法証券取引法その他のアメリカ全体での統一法がある分野に限ってカバーし,その他は州裁判所の担当である。連邦裁判所の判決に不満があれば連邦裁判所の上級審に控訴することができ,州裁判所も同様である。唯一,最高裁判所のみが連邦及び州双方の憲法上の論点を含む事件を取り扱っている。連邦裁判所と州裁判所とは全く別の組織体系に存在しているのである。
このことから,州裁判所で有罪判決を受けて刑に服した後,同じ行為でもって連邦裁判所の有罪判決を受けても,2重処罰にはならない。連邦の建物や国立公園等の連邦財産に対して違法駐車してその後逃げた車の持ち主を起訴したくても,連邦警察と検察の捜査権が連邦財産の範囲外に及ばないため,起訴をあきらめざるを得ないということも聞いたが,ここまでくると,連邦制に慣れてない身としては何か間違っている気がしてならない。
連邦裁判所と州裁判所との間には序列がないが,ロークラークを目指す学生の間では,なぜか連邦裁判所の方がスティタスがあるということになっているらしい。