英語には謙譲の美徳というものが存在しないので,例えば,お世辞を含む誉め言葉に対して「めっそうもございません。」,「私なんかまだまだ。」,「恐縮です。」等の言い回しができない。その結果,大人気なく仏頂面で「No」と言うか,ひどいときは後ずさってその場を逃げてしまうことになり,後で反省することしきりとなる。勿論,こういう場合はにこやかに「Thank you」と言うのが正解なのだが,日本人としてのアイデンティティが反射的にそうすることを拒んでいる。この謙譲の美徳というやつは,私に生まれながらに備わっているものではなく,親からしつけられたり,成長するにつれて周りの大人を見て後天的に身につけたもののはずなのに,それにしてはかなりしつこく身に染み付いている(そうでもしなければ日本で生活できないか。)。この美徳が通じるのはおそらく日韓,よくて台湾までと思われるにもかかわらず…。
もう1つ,こちらでは「自己主張を激しくしない。」,「聞き上手になる。」,「控え目」等の性格も美徳のうちには入らないようだ*1。修習生のころ,ある人から「男社会で働くのだから,クライアントに気に入ってもらえるよう,決して『私が私が』とは言わないように。」と教えられたこともあり,社会人は,社会人としての礼儀正しさの他に女はさらに控え目さが必要と一応理解しておいた。実践できているかどうかは全くあまり自信がない。ただ,幸運(?)なことに,こちらは私にとっては付け焼刃も同然だったのであまり身についていないらしく,そういった性格が生活に影響するといったことはない。むしろ,色々なことを躊躇せずに話したり,行動したりできる周りの環境と今の身分に感謝したいほどである。それでも,語彙力のないおかげで言葉につまったり,黙っていたりすれば容赦なく「Don't be shy」と言われている。

*1:仕事,学校等を前提にした場合。「日本人女性がもてる」という俗説はこの辺の性格に由来するように感じるので。